9月24日の日経平均の終値は22日終値比609.41円高の30248.81円でした。そして、今週に入り、週初9月27日の取引時間中に付けた30414.61円が直近の戻り高値になってしまいました。終値ベースでは9月24日~27日まで3営業日連続で3万円を超えていました。しかしながら、9月末の配当権利落ち日の29日は前日比639.67円安の29544.29円と、大幅安で3万円大台を大きく割り込みました。配当落ち分の181円程度、理論的に日経平均は下押しされたとはいえ、地合いは大幅に悪化してしまいました。なお、この日、自民党の総裁選で、岸田氏が決戦投票で河野氏を破り、新総裁となりました。
翌9月30日の終値は前日比91.63円安の29452.66円と、25日移動平均線(9月30日現在29474.33円)を割り込んでしまい、短期テクニカルも悪化しました。そして、週末10月1日には、前日比681.59円安の28771.07円と、大幅に5日続落しました。
日経平均が9月29日以降大きく崩れた主因は、やはり、米国株安です。米国では、9月21日~22日にかけて開かれたFOMC以降、長期金利が上昇基調のため、PER等で相対的な割高感が意識されやすいハイテク株などのグロース株が売られがちになっています。
ちなみに、9月30日のNYダウは反落し、前日比546.80ドル安の33843.92ドルでした。9月月間では4.3%安で終えました。月間で下げるのは6月以来で、下落率は昨年10月以来の大きさでした。また、ナスダック総合株価指数は5日続落し、同63.859ポイント安の14448.582ポイントでした。9月月間では5.3%安でした。4カ月ぶりの下落となり、下落率は昨年3月以来の大きさでした。
9月30日の米国株式市場の下落の背景は、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした供給網の混乱が続き、10月に発表が本格化する2021年7~9月期決算の下振れが警戒されていることが主因だったと解説されています。また、米上下両院は30日、12月初旬までのつなぎ予算を可決したものの、債務上限問題で合意しなければ米国債が初の債務不履行に陥りかねないことも嫌気されました。
一方、国内では、自民党の新総裁に選出された岸田文雄氏は総裁選で金融所得課税の見直しを主張しています。岸田氏は、一律20%の税率を引き上げて税収を増やし、中間層や低所得者に配分する考えです。この増税リスクの高まりが投資マインドを冷やしています。また、10月1日、岸田氏が、麻生太郎財務相の後任に、麻生太郎氏の義弟(姉が麻生氏の妻)の鈴木俊一前総務会長を起用する方針を固めたと伝わったことも、市場を失望させました。鈴木氏は、財務省寄りの緊縮財政派と目されているからです。さらに、党4役の人事に関しても、「意外性なく高揚感に欠ける顔ぶれ」というのが大方の評価のようです。
日本株については、次期衆院選の投開票日までは、相場は上げ下げを交えながら、上昇トレンドを維持するというメインシナリオは、9月29日の日経平均の25日移動平均線割れをもって、「白紙撤回」します。今後は、不安定さを増している米国株の動向に神経質になる展開をメインシナリオに据えます。残念なことに、国内では、岸田新政権の政策への期待感も大幅に後退しています。このため、当面は、調整色の強い相場を想定して、リスク管理を厳格化した運用スタンスを堅持することをお勧めします。
2021年10月1日
相場の見立て・展望(10月01日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。