日経平均の1月5日高値は29388.16円でした。その後、1月27日には一時26044.52円まで下落する場面がありました。1か月弱の下落幅は3343.64円に達しました。しかしながら、これが目先の底値になり、2月10日には一時27880.70円まで上昇する場面がありました。この間の上昇幅は1836.18円と、下落幅の54.92%を戻しました。テクニカル的に、完全に半値戻しを達成しました。
2月10日に27880.70円まで買われた主因は、前日9日の米国株高です。9日のNYダウは3日続伸し、前日比305.28ドル高の35768.06ドルでした。また、ナスダック総合株価指数は続伸し、同295.918ポイント高の14490.373ポイントでした。9日の米10年物国債利回りは前日比0.02%低い1.94%でした。前日に付けた2019年1月以来の高水準である1.97%から、米10年物国債利回り低下したことが、ハイテク株などのグロース株の買い材料になりました。また、米ジョンズ・ホプキンス大の集計によると、9日時点での米国での新型コロナの新規感染者数は7日移動平均で約23万人と1月中旬のピークの3分の1以下に減りました。これを受け、経済正常化期待が高まり、消費関連銘柄が買われました。
ところで、日本時間2月10日夜に予定される1月の米CPIについては、市場予想は7.2%と12月の7%から加速が見込まれています。発表される物価上昇率が市場予想を上回れば、FRBがタカ派姿勢を一段と強める可能性があります。つまり、利上げピッチの加速や、量的引き締め(QT)の開始時期が前倒しになることが警戒されます。米国長期金利が多少上昇しても、ここ最近の米国株は崩れにくくなっているとはいえ、大幅に長期金利が上昇するようだと、高PERのハイテク株への売り圧力が再び強まるリスクがあります。そのケースでは、足元でリバウンドしている日本株も再び、下値模索の動きに陥る可能性は否定できません。
また、2月16日にはFOMC議事要旨(1月25〜26日開催分)の公表が予定されています。市場の織り込みを超えるタカ派スタンスが判明するケースでも、米国株が動揺し、その影響を日本株が大きく受けることは否定できません。いずれにせよ、当面の日米株式市場では、FRBの金融政策への思惑や、インフレリスクの高まりなどが攪乱要因として、強く意識され続けることでしょう。
なお、2月10日の日経平均は前日比116.21円(0.42%)高の27696.08円と、3日続伸しました。5日移動平均線(10日現在27449.86円)、25日移動平均線(同27625.78円)共に上回っています。一方、75日移動平均線(同28497.67円)、200日移動平均線(同28588.27円)共に下回っています。現在は、中長期の下落トレンドの中の短期的なリバウンド局面と認識しています。現時点での当面のメインシナリオですが、1月27日の26044.52円が当面の底値。第1戻りメドの25日移動平均線は2月10日にクリアしたので、次の戻りメドは心理的節目の28000円大台回復とみています。ただし、5日移動平均線を割り込むようだと、再び、調整色が強まると考えます。不安定な相場を想定しています。慎重な運用をお勧めします。
2022年2月10日
相場の見立て・展望(2月10日付)
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
- 情報のプロフェッショナル
- 藤井 英敏
カブ知恵代表取締役。
1989年早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、日興證券(現SMBC日興証券)に入社。前職のフィスコ(証券コード3807)では執行役員。フィスコを代表するマーケット・アナリストとして活躍。退職後に同社のIPOを経験。2005年にカブ知恵を設立。歯に衣着せぬ語り口が個人投資家に人気。雑誌「宝島/夕刊フジ/ZAIオンライン/トレマガ/あるじゃん/ダイヤモンドマネー/マネーポスト/日経ビジネス/エコノミストマネーザイ」をはじめ多方面に活躍中。
- 証券会社のディーリング部に在籍し、株式売買の経験があるものを証券ディーラーと呼称しています。